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「ありがとうございます、学生時代にちょっとやっていたものですから」「どうりで」そんな会話がきっかけで、あるときプロがこういってくれた。
「今度、うちのコンペに出ませんか?Fさんなら優勝も狙えますよ」F君は即座に首を横に振ってみせた、「それが・・・最近コースに出ると全然スコアが作れないんです、90がなかなか切れなくなってしまって・・・」「ほほう。
そうですか」練習終了後、プロはF君を自分の部屋に招き入れ、お茶を入れてくれた。
悩み続けていたF君は自分の状態を正直に打ち明けた。
するとプロはこんな話を始めたのだ。
「わたしにもそういう経験がありますよ、こう見えても昔はトーナメントに出ていたんですが、あるとき体を壊して1年休みました、やっと復帰できて『さあ、やるぞ』と思ったら70台が出せなくなっていたんです」技術面は故障前と変わっていないと感じていたし、周囲もそういってくれた。
だがスコアは別で、予選落ちを繰り返すうちに試合にも出られなくなっていった。
「それからかなりたってからですね、その原因がわかったのは・・・、僕はバーディー病だったんです」プロなのだから、常にバーディーを狙うのは当たり前。
そのくらいの意気込みがなければ強くなれないのも事実だという。
だが復帰後は、休養中のプランクを取り返そうとしたあまり、その気持ちが一層強くなった。
なりすぎたくらいだった。
だが当時は、そのことが80を切れなくなった原因だとは気づかなかった。
それが判明したのは、練習場の客に請われてラウンドレッスンを始めてからだ。
当初は、そうした試合以外のゴルフでも頭の中にはバーディーしかなかった。
プロらしさを見せてやろうと思っていたからだが、やはりうまくいかない。
逆にプロらしからぬミスショットを見せる結果になっていった。
「さすがにカッコが悪くなりましてね、あるとき気持ちを切り替えたんです、バーディー狙いをやめ、一打ずつはそこそこでいいからパーを拾っていこうって、そうしたら、いきなり65が出ました、驚きましたね」スイングは何も変わっていないのに、なぜ65が出たのかを随分考えた。
その結論がバーディー病だったのだ。
バーディーをとるにはバーディーパットを打たなければならない。
絶対2オンさせなければならなくなる。
パー4のホールならティーショットはフェアウェイキープが絶対条件。
かなりの飛距離も必要だ。
第2打は距離と方向を合わせてピンそばにつけ、パットも外せなくなる。
3打を完璧にこなすプレーが必要になるのである。
だが「パーでいい」となれば全然違ってくる。
3オンーパットでもいいのだから、パーオンはいらない。
ティーショットは第2打でグリーンそばに球を運べる場所に打てればいいだけだ。
飛ばない、曲がるという2つのミスがある程度は許される。
第2打も、乗らなくてもピンに寄せやすいところに飛べばいい。
2オンできたときは、最初のパットはカップ近くに寄ればいいだけ。
距離感やラインの多少の狂いもミスにはならない。
そう思って打つと、パットがよく入った。
気持ちが楽になると、ストロークがスムーズになるからきちんと打てる。
結果としていい転がりになるから入る確率が増えた。
同じ現象はショットにも現れた。
楽な気持ちで振ると、力みがなくなる分だけヘッドが走るから、飛んで曲がらなくなった。
「そんなこと、前から他人には教えていたんです、自分でできなかったのは『パーでいい』と本気で思っていなかったからでしょうね、バーディーが難しいホールでも、どこかに『うまくいけば・・・』というスケベ心があった、アドレスはパーのルートに取っているのに、気持ちはバーディーのほうに向いていたから、スイングが狂ってしまうんですよ、それに気づいたときにはもう、試合で戦える年ではなくなっていました」F君は、その話を自分のプレーに当てはめてみた。
プロのバーディー狙いが病気なら、自分はパー狙いが病気なのではないかと・・・。
すると思い当たることが山ほど出てきた。
例えばティーショットが深いラフに捕まったとき、ひどいダフりやトップでラフから出すこともできなかったのは、何か何でもグリーンに乗せようとしていたからではないか。
林からの脱出に何打かを費やしたのも同じだ。
それに懲りて、第2打で手堅く出しても、第3打を打つときはピンの根元を狙ってミスをしていた。
『絶対パー』のプレッシャーを自分にかけていたからだ。
1ホールで大叩きすると、その後にボギー、ダボが止まらなくなるのも、それ以上叩くまいとして、パーを狙い続けた結果ではないか。
「どうして僕のゴルフはそうなってしまったのだろう」とF君は思った。
しばらくすると、その原因もまた見えてきた。
周りから「体育会育ち」と見られ、自分でもいいプレーを見せてやろうと気負い過ぎていたのだ。
思えば、学生時代のF君も常に18ホールをパープレーで上がれる腕前ではなかった。
その事実を忘れてしまうほど、自分を見失っていたのである。
それ以降、F君は「ボギー狙い」に切り替えた。
すると、そう時間がかからないうちに以前のレベルのスコアが戻ってきたという。
「それで初めてわかったんですよ、オペレーションを忘れていたことを・・・、ハードウェアであるスイングも、ソフトウェアであるコース攻略の知識も大切ですが、両方を最高の状態で作動させるには、最適なオペレーションが不可欠それでスコアが全然違ってくるのは当然なんです、あらためてゴルフの奥深さを知らされた思いです」『次の予測』が好結果を生むミスにミスを重ねる原因は「後悔・焦り・取り戻し」得手・不得手はゴルフにつきもの。
どんな名手にも『苦手』はあるらしい。
例えば、米国のL・N氏。
彼は希代の天才ゴルファーだ。
ほとんどの選手が10代かその前からゴルフを始めるが、彼がゴルフを始めたのは21歳。
それからわずか3年でツアーテストに合格。
世界の四大トーナメントでも3勝(全米プロ2勝、全米オープンー勝)をあげてきた。
こういう例は非常に稀である。
そのL・N氏にも苦手があった。
「四大メジャー全部に勝ちたいが、全英オープンだけは無理、コース設定が僕には合わないからノー・チャンスだ」現役時代にこう話してくれたことがある。
L・N氏の大ファンだったというIさんは、この話に大きくうなずいた。
「やっぱりね、ファンとしては残念だけど、どうにもならないことっていうのは、ゴルフにはあるんだよ」もちろんIさんにも苦手はある。
池越えのショットだ。
きっかけは、彼があるコースのメンバーになったことだった。
17番ホールはドライバーショットがしっかり当たれば、第2打は残り200ヤード前後しかない短いパー5.飛ばし屋のIさんは4番アイアンで2オンが狙えることもある。
だが、グリーン手前に大きな池があり、これがなかなか越えられない。
「池ポチャも1発ならまだいい、ワンペナを加えて池の手前から打ち直す第4打がピンに絡めばパーのチャンスもある、でもそれがまた池ポチャになってしまうんだ」そのホールで池ポチャ連発の怖さを覚えてからは、池越えショットそのものが苦手になってしまった。
そのIさんが、友人に誘われてゴルフにでかけた。
大きな池はないコースだったがラフが難しかった。
草が粘っこく、うまく飛ばせないのである。
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